見えない糸
「あの日は学校が終わって真っ直ぐ家に帰ってきたの。
いつもは施設に手伝いに行くんだけどね。
帰ったらお母さんと、あの男もいた。
私はそのまま自分の部屋に入ったの。
お母さんがいるから大丈夫って安心していたら、玄関ドアの音が聞こえて車が出ていくのが分かったの。
すぐヤバい!って思った。
誰も入られないようにドアの前を重い物で塞ごうとしたけど、そんな時間もなくて。
隠れたくても隠れる場所もなくて。
少ししてから階段を上がる足音、あの男が部屋に入ってきた。
『お母さんは買い物に行ったよ』そう言いながら。
私、こないで!って言ったの。
今勉強してるんだから邪魔しないで!って言ったの。
それなのに、あの男はニヤニヤしながら近づいてきたの…
『お母さんは、すぐには帰ってこないよ』って言いながら…