見えない糸

「あの日は学校が終わって真っ直ぐ家に帰ってきたの。
いつもは施設に手伝いに行くんだけどね。

帰ったらお母さんと、あの男もいた。

私はそのまま自分の部屋に入ったの。

お母さんがいるから大丈夫って安心していたら、玄関ドアの音が聞こえて車が出ていくのが分かったの。


すぐヤバい!って思った。


誰も入られないようにドアの前を重い物で塞ごうとしたけど、そんな時間もなくて。
隠れたくても隠れる場所もなくて。

少ししてから階段を上がる足音、あの男が部屋に入ってきた。

『お母さんは買い物に行ったよ』そう言いながら。



私、こないで!って言ったの。

今勉強してるんだから邪魔しないで!って言ったの。


それなのに、あの男はニヤニヤしながら近づいてきたの…

『お母さんは、すぐには帰ってこないよ』って言いながら…






< 107 / 110 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop