見えない糸
「部屋中が赤黒く、そして動かなくなったアイツの周りには紅い物が光っていた。
気持ち悪い臭いなのに、爽快感が入り混じってる変な感覚。
私にとっては、お母さんを守るため・自分を守るために殺ったの。
達成感に似たものもあった。
でも…この悲しみは何なんだろう…
お母さんと抱き合いながら号泣したけど…
アイツから逃れられたって喜んだけど…
私の中では正当防衛だと思っているけど、お母さんはどうだったんだろう。
私は、もう考えることが出来なくなっていたの。
その時にあった出来事だけで頭がオーバーヒートしたの。
それから先は…全く思い出せない。
先生ごめんね。
私、全部は取り戻せなかった。」
紗織が話し終わると、直次はテープレコーダーを止めた。