見えない糸
どっちだ?!

すっかり暗くなった家の回りをキョロキョロしてると、左側からコンビニの袋を提げて近付いてくる人がいた。

「オジサン、どうしたの?」

至って普通の、いつもの紗織がいた。

「どこ行ってたんだ…」

本当はビシッと言うところだろうけど、ここは敢えてソフトに話した。

「コンビニよ。今日はゴハン作りたくなくて…」

「で、何でお菓子なんだ?まさか晩ごはんがお菓子なんてことじゃないよな?」

フフフッと紗織は笑って

「違うよ!オジサン帰ってきたら、どこかに食べに行きたいなって思ったの。何時に帰るか分からないし、でも少しお腹空いたから、お菓子買ってきちゃった」

そうだったのか…

一安心した。

まずは紗織の方からあの手紙を聞かれるまで、黙っておこうと直次は思った。

「じゃ、食べに行こうか」

直次は紗織の頭をポンポンと叩いて家に戻った。

「何がいい?俺は、この時間からの焼肉はキツいから避けたいんだけど」

「あはは!オジサン年だからね!」

「仕方ないだろ…次の日に胸焼けして大変になるんだからさ」

「じゃ、ラーメン食べに行こうよ。オジサンが好きな店にしようか」

紗織はコンビニの袋をリビングのソファーに置いた。

何となく、無理に明るく振る舞ってるような気がした。

直次の不安は、ますます大きくなった。

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