見えない糸
決断
直次は紗織とラーメンを食べた後、少しドライブをした。

本当は真っ直ぐ帰るつもりだったが、紗織がお腹空いたと言う割に、半分以上残したのが気になったからだ。

「紗織、あの店のラーメン、不味かったのか?」

時々、紗織の方を見ながら直次は聞いた。

「んー?美味しかったよ」

直次と視線も合わせず、ただ外を眺めながら紗織が言う。

「本当に?かなり残したじゃないか…」

「食べたよ、けっこう…」

それきり紗織は黙ったまま、何も言わなかった。



直次は1時間くらい車を走らせた後、自宅に向かった。

少しは紗織にとって気晴らしになるかと思ったけど、気晴らしどころか、もっと重い感じにしてしまった。

『やっぱり…父親として失格だよな…』

小さな溜め息を1つついた。

「オジサン…どうしたの?」

「ん?どうもしないけど?」

「ふーん…どうもしないなら溜め息つかないでよ…」

聞こえてたのか…

「ああ、紗織が話してくれないから、寂しくてな」

「…なにワケ分かんない理由言ってんだか…」

フンッと鼻で笑う紗織に、直次はただ苦笑いするだけだった。


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