見えない糸
拒絶
紗織の過去を見つける治療は様子を見ながらやってるが、なかなか進まない。
相変わらず、小学校時代の話をするのを嫌がっている。
突き進んでいきたいけど、ゆっくりやるしかない。
毎回、小学校時代で止まる。
1年ごと時間を巻き戻していくのがベストだけど、このままだと、いつになったら紗織自身から口を開いてくれるのか…
治療を初めてから10日が過ぎたある日、直次は紗織と水族館に出かけていた。
「オジサン水族館が好きなの?」
「好きというか、優雅に泳ぐ魚達を見ると癒されるというか…」
紗織がプーッと吹き出し、大笑いした。
「そこまで笑うこと無いだろ…」
「ゴメン!でもオジサンから水族館は想像出来なくて…」
週末ということもあって、家族連れが多い。
それだけでなく、この水族館で生まれたアザラシのお披露目もあるから、余計に人が多い。
直次は、お気に入りの水槽の前に立っていた。
ここの水族館の一番大きな水槽の中で、いろんな魚達がフワッと飛ぶように泳いでいる姿を、直次は吸い込まれそうな錯覚を覚えながら見上げていた。
「オジサン」
「ん?どうした?」
「なんだか、マッタリしてるなーって」
「魚が?」
「いや、オジサンが」
「俺が?」
「うん。一通り見た後、またここで止まってる。岩場に付いてるフジツボみたいに」
そう言いながら、紗織はクックッと笑った。
「フジツボかよ」
直次も苦笑いした。
相変わらず、小学校時代の話をするのを嫌がっている。
突き進んでいきたいけど、ゆっくりやるしかない。
毎回、小学校時代で止まる。
1年ごと時間を巻き戻していくのがベストだけど、このままだと、いつになったら紗織自身から口を開いてくれるのか…
治療を初めてから10日が過ぎたある日、直次は紗織と水族館に出かけていた。
「オジサン水族館が好きなの?」
「好きというか、優雅に泳ぐ魚達を見ると癒されるというか…」
紗織がプーッと吹き出し、大笑いした。
「そこまで笑うこと無いだろ…」
「ゴメン!でもオジサンから水族館は想像出来なくて…」
週末ということもあって、家族連れが多い。
それだけでなく、この水族館で生まれたアザラシのお披露目もあるから、余計に人が多い。
直次は、お気に入りの水槽の前に立っていた。
ここの水族館の一番大きな水槽の中で、いろんな魚達がフワッと飛ぶように泳いでいる姿を、直次は吸い込まれそうな錯覚を覚えながら見上げていた。
「オジサン」
「ん?どうした?」
「なんだか、マッタリしてるなーって」
「魚が?」
「いや、オジサンが」
「俺が?」
「うん。一通り見た後、またここで止まってる。岩場に付いてるフジツボみたいに」
そう言いながら、紗織はクックッと笑った。
「フジツボかよ」
直次も苦笑いした。