見えない糸
このまま、紗織の心を閉ざしたまま、ずっと暮らしてはいけない。
ハッキリ言って、あの紗織の姿を見続けるのは、直次自身にもコタエル...
一日の疲れを、毎晩の入浴やアルコールで取れる訳がない。
やっぱり、元気でニコニコ笑顔の紗織と過ごす事が一番だった。
「また溜め息ですか?」
年配看護師に言われてしまった。
「そんなに溜め息出てましたか?」
直次は頭に手をやりながら訊いた。
「ええ。何か悩みでも?」
「いや、そんなんじゃないです」
笑って答えるしかなかった。
一旦、外の空気を吸ってこよう...
病院の玄関を出ると、タイミングよく電話が鳴った。
「もしもし?」
相手は元施設の小谷先生だった。