見えない糸

13:00ちょうどに玄関のチャイムが鳴った。

「小谷です」

「はい。お待ちしてました」

直次は玄関のドアを開けた。

「約束ピッタリの時間でしたね」

「ええ...あの、車はどこに停めたら宜しいんでしょうか?」

「あ、私の車の隣に停めて下さい」

小谷は「わかりました」と言って、また車に乗った。

白の軽四を運転する小谷は、お世辞にも上手とは言えない。

自分の車にぶつけられるんじゃないだろうかと、内心ハラハラしながら見守っていた。

どうにか駐車スペースに停め、車から降りた小谷は、恥ずかしそうに

「運転が下手で...」と、頬を紅くしながら言った。

『でしょうね』の「で」を言った後、何事もなかったように

「さ、どうぞ」

と、来客用のスリッパを出し、部屋へ案内した。



「これ、つまらないものですが...」

小谷は紙袋を直次に渡した。

「あ、これ【ゆめや】の!私シュークリーム大好きなんですよ」

「...すみません...シュークリームにしたら良かったですね...」

中には【ゆめや】で人気の、おかきのセットが入っていた。

「すみませんッ!!いや、おかきも好きですよ。ははは...」

あー恥ずかしいッ!!

直次の顔から火が出そうだった。




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