見えない糸
「あの…この『高谷 進』という人を御存知ですか?」
直次は年配の男性に聞いた。
「いえ…聞いたこと無いですね…他の職員にも聞いてきましょうか?」
「お手数かけます…」
男性は席を立つと、ものの数分で戻ってきた。
「全員知らないそうです」
「そうですか…あの、当時の職員名簿とかはありますか?あれば拝見したいのですが…」
「それはあります。少しお待ちください」
また席を離れて行った。
直次は、気になった写真以降のアルバムにも目を通した。
友達と遊んでいても、みんなでおやつを食べていても、どの写真にも写ってる紗織の表情は曇っていた。
「これは…!」
それに、少しだけ写ってる紗織の二の腕に、赤黒くなってる部分があった。
目を凝らして見ても、それが何なのかハッキリしないが、普通にぶつけて出来るモノじゃない。
「こちらが名簿です」
資料を持ってきてくれた男性に、直次は言った。
「すみません、こちらの写真もお借りして宜しいですか?」
たくさん資料や写真を借りて、そこの施設を後にしようと玄関に向かった。
「ありがとうございました」
他の職員の方々にもお礼を言うと、そのまま車に戻った。