見えない糸
少し時間をおいて、直次は紗織の部屋に向かった。

中では鼻をすする音が聞こえる。

ドアをノックしたが返事はなかった。

「紗織」

「…」

「このままでいいから、聞いてくれ」

直次は部屋にいる紗織に向けて、話し出した。

「俺は真剣に紗織の過去と向き合いたいんだ。その為には、ちゃんと時間をかけていきたい。仕事をやりながらだと難しいんだ。それに、ずっと考えて出した事なんだ」

簡単にまとめて話した。

これが、ちゃんと紗織に伝わっただろうか…

何も返事がない。
寝てるのか?と思うほど、部屋の中は静かだった。

別の日に改めて話をしよう、直次はドアに背を向け、リビングに戻った。


ソファーに腰掛けると、大きな溜め息がもれた。

どうやら、単に紗織の記憶を戻すだけで、全てが解決する雰囲気ではない感じがする。

紗織について、まだ何かを隠してるように思える、施設の先生だった小谷と、謎の人物『高谷』

これから踏み込もうとしている所に、幸せはあるのだろうか?




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