見えない糸
病院側は、直次の状況を理解してくれた。

これからは、紗織の為だけに時間を使える。

病院を出た後は自宅には戻らず、施設に向かって車を走らせていた。


施設に着くと、見たことのある車が停まっていた。
そう、小谷の車だ。

直次は素早く車を停めると、急いで玄関のインターホンを押した。
対応してくれたのは、前にも対応した若い女性だった。

「あ、あなたは…」

「先日はどうも…」

「あの、この人です!さっき話していた人は!」

すると、職員室から小谷が姿を見せた。

「佐々木先生でしたか…」

ホッとしたような、でも小谷のその表情は困ったようにも見えた。

「どうも。何を話されていたのか全く分かりませんが…」

直次は、はははっと作り笑いを見せた。

小谷は職員室に戻ると、手荷物を持って出てきた。

それでは…と直次に会釈をした小谷に「待ってください」と声をかけた。

「私は小谷先生にお聞きしたい事があって、こちらに伺ったんですが、ちょうどお会い出来たので」

直次は施設の先生方に会釈をした後、小谷と一緒に玄関を出た。









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