見えない糸
写真を見ながら直次はハッとした。
高谷の隣に写ってる女が紗織の母親だと知っているなら、紗織の母親と接触したことがあるんじゃないのか?

「あの…小谷さんは、この女性と会ったんですか?」

「いいえ、会っていません。会えるわけないじゃないですか…」

「どうしてです?」

「だって…この時には既に紗織ちゃんの父親としていたんですから…」

「は?よくわからないんですが…」

小谷は、またタバコを咥え火を点けた。

「わかりませんか?私は高谷の浮気相手...不倫なんですよ」

「確か紗織の両親は離婚したんじゃ?」

「ええ。その後、高谷と付き合ったみたいです。籍は入れてなくて…まぁ “ 内縁の夫 ” ですね。だから本当の不倫とは違うでしょうけど」

小谷はタバコの煙をフーッと吐き出すと、テーブルに置いていた写真を手に取った。

「今まで何人の女を騙してきたんだか!」

フンッと言いながら写真の高谷の顔を、ピンッと指で弾き叩いた。 

「小谷さんも騙された1人と言ってましたが?」

「お金貸してたのよ。物凄い大金ではないけどね。いろいろ貢いじゃったわよ。まさか他に女がいたなんて知らなかった。しかも内縁関係だなんて…私は高谷を愛してしまっていた…今更別れるなんて出来なかった…2番目でもいい、高谷の気持ちを繋ぎ止められるなら…」

直次は、もう冷めてしまったコーヒーを口にした。

小谷にこんな熱い一面もあったのか…
見た目とは余りに違いすぎるので、想像もつかないが…

「でも」

小谷はタバコを吸い込み、写真を睨み付けながら言った。

「あんな男、殺されて当然よ!!」


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