見えない糸
小谷のセリフに、直次は耳を疑った。

「殺された?この人、殺されたんですか?」

「ええ、そうよ。私は殺されたと思ってるわ。何人もの女を言葉巧みに騙して、その気にさせてきたのよ、殺したいと思ってる人がいても不思議じゃないわよ。あ、私は殺してないわ。死ねばいい!とは、思ってたけど」

要注意人物、高谷を思い出させたせいなのか、小谷はタバコを吸い終え火を消しても、またすぐに火を点ける。

ここにアルコールでもあったら、完全に絡まれてるな…
直次は小谷にバレないように苦笑した。

「小谷さん、誰が高谷さんを殺したのか見当は?」

「さっぱり分からないわよ、だって紗織ちゃんの母親と私の間にも何人も女がいたみたいだし」

「それは、紗織ちゃんの母親から聞いたんですか?」

「高谷本人からよ。私には正直に話してたわ…私の方が惚れてたし、何をしても離れないだろうって思われてたのね。確かにどんな形でも離れたくなかった。なのに死ねばいいと思ってしまって…私で最後にして欲しかったのよ…女遊びは…」


男は自分が最初の男になりたいと思い、女は自分が最後の女になりたいと思うものだと、何かで読んだことがあるな…

直次は手帳を開き、調べることの追加を書いた。

『高谷の死因』だ。

そして、小谷に再度訊ねた。

「小谷さんが高谷さんと別れたのは、いつなんですか?」

「…もう忘れたわよ」

「じゃ、高谷さんが亡くなった時は、もう別れていた?」

「…そうね」

直次はメモをとりながら聞いていた。

でも、ここで不思議に思い手を止めた。

「小谷さん、本当に紗織や紗織の母親とは接触なかったんですか?」








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