見えない糸
紗織から手渡された写真の裏には何も書いていなかったか、そこに写る男女は紗織の関係者だ。
これを見せるのは、もう少し情報をまとめてからにするつもりだったのに、自分のだらしなさのせいで、こんな形で紗織の目に晒してしまったのだ。
「あの...」
紗織に話し掛けようとするが、次の言葉が見つからない。
「あ、ごめんなさい...アタシもう寝るね」
チラッと直次を見た後、リビングを出た。
紗織が涙ぐんでいるように見えたので、直次は追い掛けるように名前を呼ぶと、今度は直次の方を振り返らず
「おやすみなさい...先生」
と言った。
階段をかけのぼる音と、紗織の言葉が、直次の頭の中に響いている。
何か聞き間違ったのか?
そう...違和感は紗織の最後のセリフだった。
『先生』だって...?
今までは『オジサン』だったのに、どうして急に『先生』なんて言うんだ?!
『先生』と言っていたのは、まだ紗織が入院する前...
直次は、ハッとした。
もしかして...もしかして...ッ!!