見えない糸
変えられない真実
険しい表情になっていた紗織が、急に無表情に変わった。
その変化が直次は気になり、ノートに書き込んだ。
やはり紗織にとって、高谷の存在は、かなり重要な意味があるに違いない。
「紗織、高谷って誰なの?」
「...最近よく来る男...」
「遊びに来てるのかな?」
「新しいパパ...」
この時には紗織の母親は、再婚していたのか...
でも、小谷は『内縁のー』って言ってたはず。
手帳を開き確認すると、そう書いてあった。
小学生の子供に、籍を入れる・入れないなんて難しいし、そこまで詳しく話す必要もない。
だから、新しいパパだと紹介したのだろう。
「新しいパパなら、嬉しいんじゃないの?」
直次は、そう優しく言うと、無表情のままの紗織は
「パパなんていらない。ママだけでいい」
と答えた。
難しい年頃に、高谷が出入りするようになったんだから、紗織の中では高谷をパパとして受け入れたくなかったんだろう。
「紗織は、新しいパパ嫌いなの?」
「嫌い」
即答だな...直次は、笑いそうになったのを堪えながら、メモをとった。
紗織の表情が、また変わった。
さっきまで無表情だったのに、眉間にシワ寄せている
「紗織、どうした?」
「...来ないで...」
「どうした?誰に “ 来ないで ” と言ってるんだ?」
首を左右に振りながら、強い口調で言った。
「これ以上、近付くんじゃねぇッ!!」