見えない糸
残酷な糸
今起きてる事が理解できなかった。
高谷を殺した?
紗織が?
違うだろ?
本当は高谷を殺したのは、別の誰かだよな?
直次は勝手に、そう思っていた。
小学生の子供に、人を殺せるわけがない。
そんなの有り得ない!
「ちょっと落ち着こうか…」
タバコをくわえ、火を点けようとするが、ライターを持つ直次の手が震えて、なかなか火が点かない。
何度もカチカチ音が鳴るだけだった。
「何で点かねぇんだよ!これだから安物ライターは…!」
イライラする気持ちを抑えながら立ち上がると、キッチンの戸棚から別のライターを取り出し、その場で火を点けた。
タバコの煙の奥には、涙を流す紗織が見える。
どう話を切り出せばいいんだ?
聞きたいことは山ほどあるのに、頭の中が混乱して、どう話せばいいのか分からない。
直次は、何とか時間をもたせたくて、フィルター近くまでタバコを吸うと、また紗織の隣に戻った。
かける言葉も見つからないままに…