君を愛したい
「じゃ、もう行くから」
「へいへい。気をつけろよ?」
「うん?」
“気をつけろ”
星来は何のことかわかってねえけど、これはまあ、ようするに……
遠まわしに“悪い男に引っかかるな”って言っているんだ。
「じゃあねっ」
「んー」
ドタバタと出ていく星来に相づちを打ちながら、俺はリビングへと足を向けた。
□
「あおぞら、ちゃんっ!」
「どぅわっ!…てめっ……陸っ!」
コンビニから帰ってきた母さんに見送られ、星来より30分後に家を出た俺に抱きついてくる奴が一名。
七瀬陸(ナナセ リク)
七瀬先輩の弟で、俺の悪友。
「おはにょー」
「いいからどけよ……」
ため息混じりに言うと、案外素直に陸は俺の背中から体を離した。
「……お前が素直だと気持ち悪いんだけど…」
「酷いな!それより星来ちゃんは?」
「朝練だってよ」
「ふうん……寂しいね、お兄ちゃん」
俺を哀れむようなその目がムカつく。
つか、“お兄ちゃん”って呼び方の方が寂しいんだけど。