君を愛したい
恨めしげに陸を見ていると、不意に後ろから声がした。
「陸」
「兄ちゃん!」
パァッと声がした方を振り向く陸。
それにつられるように俺も振り向くと、そこには言葉通り、陸の兄である七瀬先輩がいた。
「ども」
「あぁ」
いつものように挨拶をし、俺は学校の方へと足を戻す。
そしてふと思う。
「……なあ、陸」
「なにー?」
「お前…何部だっけ?」
「…野球かな」
「……朝練、いいのかよ」
今まで思い出さなかった俺も俺だけど……
星来は朝練に行ったっつうのに、なんで同じ部活のこいつがここにいるんだよ。
シラーとした目を、七瀬先輩の隣にいる陸に向けると“あぁ”とポンと手をついて口を開いた。
「さっき…」
「は?」
「さっき、蒼空に言われるまで忘れてたから」
「おまっ、試合前なんじゃねえのかよ」
眉根を寄せながら言うと、陸は俺にVサインを見せつつ返事をしてきた。