君を愛したい
米村という存在
―キーンコーンカーンコーン……
「あー…やっと帰れる」
「お前、ほとんど教室いなかったじゃん!」
俺のつぶやきに、びしっと俺を指差しながら大声をあげる陸。
「はいはい。つか、お前、早く部活行けよ。星来のために」
「……なあ、蒼空」
「なんだよ」
いつものようなやりとりの途中、陸が不思議そうに俺に向かって口を開いた。
「いつも思うんだけど…蒼空が野球部入ればいいんじゃねえの?」
「…………」
痛いとこ突かれたな…
適当に交わすことができず、じっと陸を見てしまう。
「…そんな見つめんなって~」
俺が言葉に詰まったことに気づいたのか、わざとらしく話をそらす陸に、ふっと笑みがこぼれる。
「また、話すよ」
「…おうっ!じゃ、俺行くわ」
俺の言葉に一瞬意外そうな顔をしたあと、陸はいつものようににっと笑って鞄を手に取った。
まあ…俺が野球をしない理由も、結局は星来に繋がるんだけど。
ドタバタと教室を出て行く陸の背中を見ながら、ぼんやりそう考えた。