ダブルベッド

「我慢、ですか?」

「そうそう。詳しくは話せねーけど、ずっとフラれ続けてたんだよ」

「フラれてた?」

「厳密には告白みたいなこともしてないんだけどさ。あいつはずっと、俺じゃない男のこと見てたから」

「どういうことですか? 結婚するんでしょ? 付き合ってたんじゃないんですか?」

 沢田は笑いながら短くなったタバコを消した。

「男と女には色々あるんだよ。とにかく、俺の場合は粘り勝ちってことだよ」

「粘り勝ち、かぁ」

 フーッと煙を吐くと、煙はまっすぐに換気扇へと流れて行った。

 沢田がコーヒーをカップに入れ、良い香りが漂う。

「木下、バイオリズムって知ってるか?」

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