ダブルベッド
「ごめんね、木下くん。こんな時間に呼び出しちゃって」
すっかり落ち着いた桃香は、少しだけ情けない笑みを浮かべて謝罪した。
時間は深夜、そろそろ12を回ろうという頃である。
風呂上りの桃香は会社で見る逞しいイメージと違って、随分幼く見える。
女はメイクで変わる、なんて言われるが、確かにそうかもしれない。
会社ではスーツ姿しかお目にかかれないけれど、スペシャルにレアな部屋着姿の中は恐らくノーブラ。
普段は上品に束ねている髪も、今は半乾きの状態で下ろしている。
ゆるくパーマがかかっているなんて知らなかった。
「あたし、大概の虫類は、ゴキブリなんかも平気なんだけど、クモだけはダメなの」
桃香が淹れたコーヒーをすすりながら、充はとりあえず笑っておいた。