いちごキャンディー
“苦しいって心が泣いてるんだよ‥‥”

俺の言葉におとなしくなった空澄にもう一度聞いた


『‥どうしたんだ?』

「矢野君‥…アメリカに行っちゃう‥」


やっぱり、知ってたんだな‥‥


『うん‥俺も聞いた…』

「私ね‥‥ふられちゃった」

『っ‥そっか……』


まさか告白までしていたなんて思わなくて、どうやって慰めればいいのか思いつかなくて、ただそう答えるしかできなかった


「‥‥大丈夫。」

『え?』


空澄は言った


「大丈夫だから‥‥明日からは大丈夫だから、今日だけ、甘えてもいいかな…?!」


震えながら…それでも涙を流さず、俺の服を握りしめた空澄に


『うん‥』


俺はそう答えた

俺に何が出来る?


いつもの様にポケットから取り出したいちごキャンディー


『ねぇ、空澄。』

「ん‥‥」

『口を開けて顔を上げて?』


いつもの様に口を開いて顔を上げてくれる空澄が痛いほど愛しいと思うよ


「今日は泣いてもいんだよ。」


飴を口に落として、抱きしめた。

俺に出来た事…ただ抱きしめただけ、たったそれだけの事。


涙も流さずに君が泣くから‥‥

俺も涙を流さずに泣いたんだ
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