キスフレンド【完】
甘い体温【紫苑side】
【紫苑side】
声も出さずに涙を流す姫。
その姿があまりにも綺麗で。
俺は溢れ続ける姫の涙をキスの合間に何度も指で拭った。
俺の知っている女と姫はやっぱりどこか違う。
母さんは泣く時、必ず大声でわめきちらした。
一夜限りという約束で抱いた女は、事が終わると声をあげてギャーギャー泣いた。
『ヤリ捨てなんてひどすぎる!!』って。
ヤリ捨ても何も、最初からその約束だったはず。
付き合えないことは前もって伝えておいた。
昔、母さんが言っていた。
涙は女の武器だって。
だけど、姫は涙をこれぽっちも武器にしようと考えていないようだ。