キスフレンド【完】

少しでも前を向いて歩いて行けるなら、きっとそれでいい。


「姫が帰りたくなるまで、うちにいていいよ」


姫の居場所はここにある。


もし、新しい場所が見つかればそこに行けばいい。


姫にとって、一番いいこと……。


それは、家に自分の居場所が出来ることだと思う。


姫にとって家族は無くてはならないかけがえのないものだって分かったから。


姫がお父さん、お母さん、そして弟を本当に愛しているって


話を聞いていて、ちゃんと伝わったから。


だから、帰りたいと思えるその日まで……俺が姫と一緒にいるよ。


姫のそばにいるよ。



「紫苑、ありがとう」


姫は震える声でそう言うと、俺の頬にそっと手を添えた。

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