キスフレンド【完】
何となく授業をサボりたくなって屋上に行くと、そこには先客がいて。
コンクリートの上にあぐらをかいていた男の子。
茶色い髪が風に吹かれて揺れている。
あっ……。あの人……もしかして……。
その人が相良紫苑(さがらしおん)だって気付いて、あたしは思わず回れ右した。
「とって食ったりしないよ」
背中にぶつかる彼の低い声。
振り返ると柔らかい笑みを浮かべている彼と目が合って。
この世界にこんなに綺麗な男の子がいるなんて。
その声に引っ張られるように、あたしは彼の隣に腰を下ろしていた。
相良紫苑はこの学校で知らない人はいないというほどの有名人。
彼が歩けば、周りに黒山の人だかりができる。
とにかく、異常なほどに顔が整っている。
背が高いのに顔が小さくて。多分、8頭身どころじゃない。
茶色くて柔らかそうな髪はいつも綺麗にセットされていて、乱れているところをみたことなんて一度もない。
リアルに現代の王子様みたい。