キスフレンド【完】
「辛く……ないの?」
思わずそう聞くと、紫苑は「もう慣れた」と笑った。
だけど、その笑みはいつものように柔らかくなんてない。
全てを諦めてしまったような瞳。
怒り、悲しみ、憎しみ、憤り。
紫苑は、親に捨てられたという事実を必死で受け入れようとしている。
そんな気がした。
「……ねぇ、紫苑」
「ん?」
だからあたしは、紫苑の手をギュッと掴んだ。
大丈夫。
大丈夫だよ。
紫苑は……一人なんかじゃない。
「キスしよ?」
紫苑は一度自分の手に視線を落とした後、あたしの目を真っ直ぐ見つめた。