キスフレンド【完】
両親は俺が幼い頃に離婚した。
当たり前のように母親に引き取られて、散々振り回された。
母さんは自分の気分のいい時だけ、俺に優しくしてくれた。
でも、まだ幼かった俺にそんなことを理解できるはずもなくて。
いい子でいれば、母さんは頭を撫でてくれる。
褒めてくれる、笑ってくれる、抱きしめてくれる。
……愛してくれる。
だから、必死でいい子になろうと努力した。
幼い俺にとって、母さんだけが唯一の家族だったから。
だけど、しばらくしてからすべてを悟った。
母さんが俺に優しくしてくれるのは、自分の機嫌がいい時だけだって。
俺がどんなに頑張っても無駄なんだ……。
何もかもがめんどくさくなって、次第に家に寄りつかなくなって。
母親の顔も見たくなかったし、母親の温もりを未だに求めているバカな自分にも呆れた。