キスフレンド【完】
女と一晩中遊んで朝家に帰ると、玄関先に男のものの靴が置いてあった。
モヤモヤとする気持ちを抱えながら寝室の横を通り過ぎようとしたとき、部屋のわずかな隙間に目がいって。
見たくなかったのに、嫌でも視界に飛び込んできた光景。
知らない男と寄り添って眠る母さん。
この間、家に連れてきた男じゃない……。
家にいることが苦痛で学校にやってきたものの、授業を受ける気になんてなれなくて。
自然と足は屋上に向いていた。
この時間ならきっと誰もいない。
そこで、あの日俺は姫を見つけた。
地面に座って膝を抱えて涙を流しているように見えた。
背中を丸めて顔を膝に埋める姫。
その時、その姿が自分とダブって見えた。
幼い頃、暗い部屋の隅で母さんを待って膝を抱えて涙を流す自分と。