キスフレンド【完】


それから少しして、姫の噂を聞いた。


姫にはまだ幼い弟がいること。それが種違いの兄弟であること。


父親が死んで、母親が再婚した。


そして、弟が生まれた。


姫はこの学校の注目の的で、プライバシーなんてないに等しい。


噂が噂を呼んで、少しづつ脚色されていく。



そして、最後にはこうなった。


『姫はいらない子』


それは多分、一部の女子達のヒガミで。


そんな噂話を聞いた姫が、どんな顔をしたのかは分からない。


だけど、その噂の後、何故か俺は屋上に何度も足を運んだ。



姫がまた膝を抱えて泣いているかもしれない。


一人で背中を丸めて小さくなって……。


以前の俺のように……たった一人で……――。


でも、そんな俺の心配をよそに姫が屋上にくることはなかった。
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