キスフレンド【完】
そして、すぐさま机の奥底にしまいこんでいた一枚の写真を取り出した。
お父さんに肩車されて嬉しそうに笑っているまだ幼いあたし。
新しいお父さんがやってきてからは、その写真を写真立てに飾れなくなった。
いつまでも、死んだお父さんを引きずっているわけにはいかなかったから。
「お父さん……会いたいよ……」
辛いことや悲しいことがあると、あたしはこの写真を取り出してお父さんに話しかける。
返事がないって分かっていても、きっと天国で聞いてくれているはずだから。
胸に熱いものが込み上げてきて、それが徐々に上にあがってくる。
「お父さん……あたし、この家に居場所がないよ……」
そう呟いた時、けたたましい音を立てて家の固定電話が鳴り響いた。