求愛
携帯依存症
あの日から一週間以上が過ぎて、もうすっかりあたしの手首の傷も癒えてしまった。
だから今では何もかもが夢の中での出来事だったようで、記憶を奥底に追いやるように、思い出さないようにと努めていた。
日常に戻ることはひどく容易い。
学校に行くことに理由はないけど、でも女子高生ブランドというのはそれだけで価値が高いから。
まぁ、制服を着て歩いてればモテるなんて、便利な話だけど。
憂鬱な中で満員電車に乗り込むと、人の放つ熱気に酔いそうになる中で、ドアが閉まり、定刻通りにそれは発進した。
が、3分と経たないうちにお尻に違和感を感じ、横目にそれを捕らえてみれば、誰かの手の平に撫で回されている。
まったく、くだらない。
舌打ちを混じらせ睨んでから、
「痴漢なんかしてんじゃねぇよ。」
スーツから伸びる手を掴み上げると、50代くらいのオヤジが顔を引き攣らせた。
「待ってくれ、何かの間違いだ!」
「うるさいよ。」
ちょうどのタイミングで駅に到着した電車のドアが開き、オヤジを引きづり降ろす。
こんなこと、もう何度目だかもわからないけれど。
「オッサン、警察行くよ。」
「勘弁してくれ、頼むよ!」
男は脂汗を滲ませ、震える手で財布を取り出すと、中に入れていた札の全てをあたしに押し付けた。
「忘れてくれ、お願いだから!」
1万2千円、か。
まぁ、不景気だし、こんなもんだろうけど。
男は足がもつれるままにその場から逃げ出し、あたしはひとり肩をすくめた。
こんなことですら、たかだか小銭稼ぎのようなもので、つまらない毎日に変わりはないから。
だから今では何もかもが夢の中での出来事だったようで、記憶を奥底に追いやるように、思い出さないようにと努めていた。
日常に戻ることはひどく容易い。
学校に行くことに理由はないけど、でも女子高生ブランドというのはそれだけで価値が高いから。
まぁ、制服を着て歩いてればモテるなんて、便利な話だけど。
憂鬱な中で満員電車に乗り込むと、人の放つ熱気に酔いそうになる中で、ドアが閉まり、定刻通りにそれは発進した。
が、3分と経たないうちにお尻に違和感を感じ、横目にそれを捕らえてみれば、誰かの手の平に撫で回されている。
まったく、くだらない。
舌打ちを混じらせ睨んでから、
「痴漢なんかしてんじゃねぇよ。」
スーツから伸びる手を掴み上げると、50代くらいのオヤジが顔を引き攣らせた。
「待ってくれ、何かの間違いだ!」
「うるさいよ。」
ちょうどのタイミングで駅に到着した電車のドアが開き、オヤジを引きづり降ろす。
こんなこと、もう何度目だかもわからないけれど。
「オッサン、警察行くよ。」
「勘弁してくれ、頼むよ!」
男は脂汗を滲ませ、震える手で財布を取り出すと、中に入れていた札の全てをあたしに押し付けた。
「忘れてくれ、お願いだから!」
1万2千円、か。
まぁ、不景気だし、こんなもんだろうけど。
男は足がもつれるままにその場から逃げ出し、あたしはひとり肩をすくめた。
こんなことですら、たかだか小銭稼ぎのようなもので、つまらない毎日に変わりはないから。