求愛
驚くように目を見開いた直人と、拳を握り締め、唇を噛み締めて顔を俯かせる梢。


彼女の体は僅かに震えていた。


あれからたった一週間しか経っていないのだ、梢が怖がるのだって無理はない。


それが例え、幼馴染の直人の手であろうとも。



「ははっ、梢ちょっと今機嫌悪いから。」


乃愛は弾かれたようにその場を取り繕おうと笑ったが、それはあまり意味をなさなかった。



「こず、どうしたんだよ?」


直人は困ったように笑ってその顔を覗き込もうとするが、



「やめてよ、いい加減にして!
直人なんかには何の関係もないでしょ!」


「こらこら、そういう言い方はないだろ?
俺だってお前のこと心配してるから、こうやって…」


「うるさいっ!」


梢は金切り声を上げて耳を塞いだ。


あたしと乃愛では、とてもじゃないけど割って入れるような空気ではない。


梢は瞳に涙を溜めて、



「もう、アンタが知ってる昔のあたしとは違うの!」


吐き出した瞬間、彼女は逃げるようにきびすを返した。



「梢?!」


乃愛が焦ったようにその背を追う。


が、出遅れたあたしは直人の困惑した表情を見てしまい、その場から動けなくなってしまう。


どうするべきか。

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