求愛
タカとメールをしながら歩いていると、乃愛があたしの携帯の画面を物珍しそうな顔で覗き込んで来た。



「何か楽しそうじゃーん。」


「そう?」


と、誤魔化すように言ってみたけれど、でも内心ハラハラしてしまう。


乃愛はこれで鋭いところがあるから困る。


あたしが曖昧な顔で笑っていると、彼女は思い出したように眉をひそめて、



「ねぇ、リサもう大丈夫なの?」


「何が?」


「ほら、アンタ一年くらい前から、あのこと悩んでたでしょ。」


どきりとした。


だから足を止めてしまったあたしの反応を見て、乃愛は、



「まだストーカーされてんの?」


「………」


「実害ないって言ったって、ちょっと気持ち悪いもんね、あれは。」


もう、出会い系なんてしていないあたしの携帯には、返信さえしないので、男達からのメールはほとんどなくなった。


けれど、一年ほど前から、今も変わらず毎日のように来るメールがある。




【パンツ何色?】

【今日遅刻しただろう?】

【愛してるよ。】

【今、キミでヌイてる。】




犯人が誰かなんてわからない。


顔さえ見えない相手からの、日課になったような薄気味悪いメールの数々。

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