求愛
タカはあたし達を見て、さらに眉根を寄せる。


そして春樹の元へと歩み寄り、



「答えろよ、春樹。」


彼の胸ぐらを掴み上げる。



「待ってくださいよ、雷帝さん。
俺はただ、姉貴と話してただけで…」


「…え?」


春樹の言葉に、タカはゆっくりとこちらに瞳を向けてきた。


最低最悪だ。



「…じゃあ、リサを殴った“弟”って…」


呟いた瞬間、タカの剣幕は先ほどよりずっと恐ろしいものに変わった。


刹那、ガッ、と響いた鈍い音と共に、春樹は地面に倒れ込む。



「タカ、やめて!」


焦って止めようとしたのに、



「てめぇ、力じゃ俺に敵わねぇからって、体使って雷帝さんに取り入ったのかよ!」


今度は口元を拭った春樹が、あたしに向けて声を荒げた。


彼はこちらを睨みつけながら体を起こし、



「そこまでして俺を陥れてぇのかよ!」


春樹はあたしに掴み掛ろうとするが、タカがそれを止めたのだと思う。


あたしは突き飛ばされ、擦り剥いた膝を押さえて唇を噛み締めた。


もう本当に、めちゃくちゃだ。

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