求愛
うん、そうだよ。


春樹なんか大嫌いだったし、死ねば良いとすら思っていた。


けど、でも、あの子が苦しそうに顔を歪めるのを見る度に、あたしの中で、罪悪感の欠片がうごめくの。


だって春樹は本当は、木下くんが大好きだったから。


木下くんが当時、レベルの高い私立校の勉強についていけてなかったって、みんな知ってたのにね。


なのにそれ全部、性格の正反対だった春樹と一緒にいたからだって言われて、結局は噂に尾ひれがつき、全てがあの子の所為になってしまっただけ。


それをわかっていながら、あたしは何もかもが壊れてしまったことを春樹の所為して、今も憎み続けてる。


ねぇ、最低でしょ。



「だから本当は、消えてしまえば良いのはあたしの方なの。」


許すことすら出来ないあたしの存在なんて、なくなれば良いのに。



「やめろよ、冗談でもそんな風に言うな。」


冗談なんかじゃないのに。


なのにタカがあまりにも悲しそうな顔で言うから、それ以上の言葉が出なくなる。



「俺にはお前が必要なんだから。」


「………」


「エンペラーの中で一番可愛がってる春樹も大切だけど、それ以上にお前がいてくれなきゃダメなんだ。」


馬鹿だよ、タカは。


こんな、何の価値もないあたしのために、そんなこと言わないでよ。


泣きそうな顔なんてしないで。

< 151 / 322 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop