求愛
それから、結局あたし達が食事に出掛けたのは、夕食時もとうに過ぎた頃だった。


ここ数日で、すっかり気候も夏に近付き、夜でもむしむしとしていて気持ちが悪くなりそうだ。



「ねぇ、居酒屋行こうよ、居酒屋!」


「お前はどこのサラリーマンだ。
つか、普通女ってもっと、あれ食いたい、これ食いたい、って言うのになぁ。」


誰と比べてんのよ、なんてことは言わないけれど。


でもあたし達が食事に行くと言えば、決まっていつもの居酒屋ばかり。


なので今日も同じ店に入り、早速ビールを注文した。


ふたりで乾杯をして、料理を頼むと、



「そういや今日で試験終わりだって言ってたよな?」


「うん、赤点補修がなければ良いんだけどね。」


正直言って、あたしは私立中学に通っていたこともあり、真面目に勉強すればその辺の大学ならA判定だって取れるだろう。


なので普段はサボってばかりだが、一夜漬けでもある程度の点は取れるのだ。


まぁ、内申はボロボロだろうし、進学する気なんてないからどうでも良いけど。



「つか、改めて思うけど、お前高校生だもんなぁ。」


「うるさいよ、馬鹿。」


その“高校生”の体をむさぼっていたのはどこのどいつだよ、って感じだが。


タカはいつも、あたしの将来のことなんか何ひとつ聞いては来ない。


先の話なんかしたことはないし、もっと言えば、翌日の約束さえ交わしたりしない。


それは少し寂しくもあるけれど。

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