求愛
期末試験を終えて一週間程が過ぎた頃、あたしは補習を免れ、無事に夏休みに突入した。


まぁ、友達と遊ぶ以外にこれといった予定もないので、たまに暇潰しで短期のバイトをしたりしながら、毎日をタカの部屋で過ごしている。


大嫌いな学校に行くこともなく、好きに過ごせる日々は最高で、タカと一緒にいられる時間が何より大切だと思っていた。


だからずっとこんな風でいられるならばと、願っていたのに。


なのにそれは、いつもとなんら変わりない夕暮れ時。


雑誌を読んでいる傍らであたしの携帯が鳴り、何気なくディスプレイを確認すると、



「…うそっ…」


そこに表示されている文字に絶句した。


まさか、そんなはずはない。



「リサ、どうかした?」


タカは隣で様子に気付き、あたしを見て怪訝そうな顔をする。


が、途端に世界がぐにゃりと歪んだ気さえした。


だってそこには、“自宅”という文字が点滅していたから。


これを目にするのは、いつも年に二度、決まってお母さんが帰国した時だけだ。


ふらふらと彼に背を向け、ゆっくりとその通話ボタンを押してみれば、



『リサ、あなた今、どこで何をやっているの?』


言葉とは裏腹に、ひどく刺々しい言葉が耳を貫いた。



『話があるの。
とりあえず今すぐ家に帰って来なさい。』


ぴしゃりと言ってから、こちらの答えを聞くこともなく、一方的に遮断された通話。


茫然としたまま、あたしは悔し紛れに携帯を床に投げつけ、顔を覆った。


最悪だ。

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