求愛
きゃー、と叫んだのは乃愛だった。


きょとん顔のあたしと、驚愕しまくりの梢。



「…なっ、なななっ…」


「ほら、だから向こうで話そうって言ったのに。」


直人は悪びれるでもなく笑う。


乃愛はそれを見てからにやりと笑い、足を引こうとする梢を直人の前へと押し出した。



「こずが今まで馬鹿ばっかやってきたの、俺全部知ってるけど、そういうのひっくるめても昔と気持ち変わってないし。」


「………」


「お前ちっちゃい頃、俺のお嫁さんになりたいって言ってたじゃん。」


「…そん、なの…」


「だからさぁ、今も昔も、お前のこと一番好きなのは俺なんだっつの。」


図らずも、聞いてるこっちまで胸が熱くなってしまう。


梢は真っ赤になった顔を覆った。



「そんなこと言って、勝てなかったらどうすんのよ!」


「勝てるに決まってるよ。
エースの俺が梢のために頑張るんだから、どんな相手だろうと負ける要素ないし。」


本当に、直人らしい。


彼は笑いながら、顔を俯かせる梢の頭を撫で、



「俺のこと応援しててね。」


と、言って、体育館の方へと走って行った。


結局は涙を溜めてしまった梢を、あたしと乃愛は我が子のような目で見てしまう。


心の底から幸せになってほしいと思った。

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