求愛
頷いてから震える手で携帯を取り出し、メール画面を表示させてふたりに見せた。


同じアドレスから何通も入ってくる異常な内容のそれらに、彼らはひどく驚いた顔を見合わせる。



「…おい、これってまさか…」


道明さんは全てを悟ったように声を震わせる。


いつもふざけたことしか言わないこの人が初めて見せた、戸惑う様子。



「リサ、コイツに襲われたのか?」


タカはあたしを揺すりながら、



「何で言わなかったんだよ!
ふざけんなよ、こんなヤツ殺したって足りねぇよ!」


実害なんてないから放っとけば良いものだと思っていたのに。


なのに、タカの握り締めた拳はひどく震えている。


その腕からはまだ血が滴っていた。



「相手は誰だ!」


彼の気迫に押され、



「…いつものタクシーの、運転手の…」


あたしが言った瞬間、飛び出そうとしたタカを道明さんが制する。


振り払われた手に当たったコーヒーのカップは、パリンと音を立てて床で割れた。



「タカ、落ち着け!
あの時のことと混同するんじゃねぇ!」


「うるせぇ、アンタと俺は違ぇんだよ!」


タカの怒声に道明さんは、



「だからって、今リサちゃんの傍にお前がいてやらないでどうするんだ!」

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