求愛
そんな中で、アイさんの写真も見せてもらった。


古びたアルバムに映る、中学生くらいのタカと肩を組んで屈託なく笑う彼女は、驚くほど綺麗で、そしてロングの金髪が似合う人。


彼女は天真爛漫な笑顔で、まるで女神のようだと、あたしは思った。



「姉ちゃんは愚痴も弱音も吐かないタイプっつーか、みんなから好かれてた。
口うるさいけど優しくて、短気だけど涙脆くて。」


「何か意外。」


「まぁ、ただの元ヤン女だけどな。」


タカも道明さんも、アイさんの横で、本当に楽しそうに笑っていた。


同じ輪の中にいるのに、あたしなんかとは正反対だ。



「てか、タカが金髪スウェットだったとか笑っちゃう。」


「この頃さぁ、いっつも真夜中に叩き起こされてドライブ行くぞー、とかっていきなり連れ出されるばっかだったから、俺こんななの。」


「でも楽しそうじゃん。」


「そうだな、馬鹿騒ぎしてばっかだったけど、楽しかったよ。」


と、遠い過去を慈しむような目をしたタカは、宙を仰いだ。



「もうホントにいないんだもんな。」


きっと、本当にお姉さんが大好きだったのだろう。


だから彼が失ったものの大きさは、あたしなんかじゃ到底計り知れない。


タカはあたしの肩に頭を預けるようにして、



「姉ちゃんが殺されたのは、元を正せば俺の所為なのに。」


そう言って目を瞑ったきり、彼は眠りに落ちてしまった。


昔の面影なんかちっともない、疲弊した顔。


圧し掛かる重みの分だけ、タカの苦しみを感じ取った気がした。

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