求愛
新学期が始まり、三週間は経過しただろうか、夏休みを過ぎてみればみな、一気に素行も見た目も落ち着き払った印象だ。


さすがはこんな学校でも、曲がりなりにも受験生というわけか。


だからなのか、未だに明るい髪のまま、派手な格好をしているあたしは浮いていて、前よりずっと居心地が悪くて堪らない。


それでも卒業のためだと言い聞かせ、無駄に毎日通っているわけだが。


元気のない乃愛のことは知らないが、梢まで最近じゃチャラい振る舞いをやめてるみたいだし。


今も宙ぶらりんなのはあたしだけ、ということか。


それからさらに一週間が過ぎ、9月も終わりに差し掛かろうとしていた頃のこと。








「ねぇ、何で最近、乃愛休んでんの?」


乃愛はもう数日、学校を欠席したままだ。


初めは乳がデカイから肩こりだ、とか、拾い食いして食中毒でしょ、なんて言って笑っていたけれど。


でも、彼女は専門学校を目指しているし、この大事な時期にこんなに休むなんて、ちょっと考えられないから。


担任に聞いたが結局は、「親御さんから風邪だという連絡をもらったからなぁ。」なんて曖昧な返答しか聞かれなかった。



「病気とか?」


「なら普通、学校にそれ言うでしょ。」


「じゃあ、行方不明?」


「だったら今頃警察が来て騒いでるわよ。」


「不倫相手の奥さんに刺されてたりして。」


「それじゃ事件じゃん。」


あたしと梢は腕を組んで考えあぐねたが、当然だけど理由なんて想像すら出来ない。


だからどちらからともなく、とりあえず家に行ってみよう、という話になった。

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