求愛
その日の放課後、あたしと梢は乃愛の家にやってきた。


直前に連絡を入れたものの、返信はなく、本当にどうしているのかが気になってしまう。


チャイムを押すと、一番に玄関の扉を開けたのは、乃愛のお母さんだ。


仕事前なのか派手な格好で、あたし達ですら会うのは3度目。



「あぁ、乃愛の友達だよね?」


おずおずと頷くあたしと梢に、彼女は、



「入ってよ、あの子から聞いたんでしょ?」


聞いたって、何を?


そう思ったものの、中へと招かれた。


お母さんはそのまま乃愛の部屋の扉をノックし、



「ねぇ、友達来たよ。」


少しして、顔を覗かせた乃愛は、どこからどう見てもやつれていた。


そしてあたし達を見て気まずそうにした後で、視線だけでお母さんを追い払う。



「じゃあ、あたしこれから仕事だから、ゆっくりしてってよね。」


お母さんもまた、それだけ言って準備のためなのか自室に戻ってしまった。


パジャマ姿の乃愛は息を吐き、



「ごめんね。」


一言呟いて、あたし達に室内に入るようにと促した。


あたしと梢はその違和感に顔を見合わせるが、とりあえずラグマットへと腰を降ろす。


とてつもなく嫌な予感に支配される。


そんな中で一番に口を開いたのは梢だった。



「マジ、何があったわけ?」

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