求愛
今日一日の出来事を話して聞かせていた時、コンコン、とノックの音が聞こえた。


扉を開けたのは、乃愛。



「リサ、ここにいるって聞いたから。」


お土産袋を片手に彼女は、



「春樹くんにも、ちょっと早いけど、これ。」


と、手渡してくれたものを開けてみると、中にはマフラーが入れられていた。


モスグリーンの、手編みのものだ。



「実はうちのお母さんが腰痛めて入院しちゃって、暇だからって編んだものなの。」


「え、入院?」


「そうそう。
まぁ、腰は大したことないにしても、普段病院嫌いだから、この際色々と検査してもらうためにもね。」


「そっか、知らなくてごめんね。」


「良いのよ、全然。」


それよりさ、と言った乃愛は、



「リサもう仕事終わったんでしょ?
たまには一緒に晩ご飯食べようよ!」


「…でも、心音は?」


「あの子は今日、お泊まり保育だからねー。」


もうそんなに大きくなったのか。


この前までよちよち歩きだと思っていたはずなのに、あたしも年を取ったという証拠なのかもしれないけれど。



「じゃあ、行きますか。」


春樹にまた明日、と告げて、あたし達は病室を後にした。


乃愛とこうやって一緒に夜を過ごすのも、本当に久しぶりのことだ。

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