求愛
梢と直人もあれから変わらぬ愛を育み、春には夫婦になるらしい。


直人が大学を卒業してからは、同棲もしていたし、正直実感は薄いのだけど。


ちなみに梢をレイプしたあのあっくんとかいう男は、他の女の子にも同じことをして、最終的には捕まったと聞いた。



「あの照れ屋な梢がウエディングドレスでしょ。
ちょっと想像できないし、あたし笑ったらどうしよう。」


「こらこら、それダメでしょ。」


あたしが制すると、乃愛は息を吐いてから、



「あれから6年だもんね。」


18だったあたし達も、今はもう24だ。


あの頃のタカの年齢さえ追い越し、でも時は進み続けている。



「ねぇ、リサ。」


乃愛はあたしへと視線を移し、



「もういい加減、待つのなんかやめちゃいなよ。」


「………」


「カレシ作るとかさ、他の人に支えてもらうこと考えたって、バチは当たらないよ。」


「でもあたし、今は仕事でも半人前だし、そういうこと考える余裕ないから。」


なんて、もう何度こんな言葉であしらったろう。


確かにあれから何度か想いを寄せてくれる人に告白されたし、過去のことや春樹のことも含めて支えていきたい、と言われたこともあった。


けど、でも、あたしはタカと約束したから。


今も外すことなくこの胸元には、揃いのリングが輝いているよ。



「あたしのことより乃愛でしょ。」


「またその話?」


「アンタこそ、もうそろそろひとりで頑張るのやめたら?」


言ってやると、彼女は困ったように苦笑いを見せた。

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