求愛
言われるがままにそれに従うと、携帯は電源をオフにされ、男のポケットへと入れられる。


続いて彼は同じように財布を広げると、中に入れていたあたしの学生証が取り出され、それは写メに収められた。


これで、住所も名前も、全てが知られてしまったわけだ。



「アンタ、何者なの?」


突き付けられているナイフの輝きよりずっと冷たい、その瞳。


一般人でないのはわかるけど、でも、今まで知り合ったどのチンピラとも違った雰囲気がある。


彼は一度目を細めるようにしてあたしを見てから、



「アンタじゃねぇよ、タカ。」


名前を聞いたわけじゃないんだけど。


あっそ、と言って僅かに目を逸らすと、タカはまた唇の端を上げる。



「うるせぇのは好きじゃねぇから、悲鳴上げんじゃねぇぞ?」


言った瞬間、彼はあたしの上に馬乗るように覆い被さってきた。


すぐに手首は紐状のもので拘束され、硬いフローリングの上でタカは、ナイフ片手にあたしの体をまさぐってくれる。



「…ちょっ、痛っ…!」


無理な体勢と鈍色のそれに顔を歪めるが、でも触られれば否応なしに反応してしまう。


タカはまるで犯すようにあたしを求め、その冷たい瞳に視姦される。


だから逃げようと身をよじると、今度は肩が鷲掴まれ、服さえ脱がないままに腰が持ち上げられた。



「鳴けよ、リサ。」


殺されるのかもしれないというスリルと紙一重の快楽は一層の高揚感を生み、狂ってしまいそうになる。


タカがあたしの中に押し入るように沈んでいく。

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