求愛
「……え?」


聞き間違いではないのかと思った。


と、いうか、本当に何を考えているのかがわからない。



「そういうこと、あたしじゃなくてカノジョにでも言えば?」


タカは否定することなくまた押し黙ったので、



「大体、鍵なんか渡されたって困るし、自分で面倒見れないなら、やっぱり無責任に飼ったりしない方が良いよ。」


刹那、腕を引かれてバランスを崩した時には遅かった。


子猫はびくりと驚くように飛び跳ね、気付けばあたしは、ソファーの上で彼に馬乗るような恰好にさせられていた。



「けど、放っとけねぇし。」


タカの呟きが消える。



「たらい回しにされる辛さは、俺にもわかるから。
だからそんなんならここで飼えば良いし、お前に面倒見ててほしいんだ。」


目を合わせることが出来なかった。


ただ、悲しいまでに響く雨音だけが、静かな帳を染めていた。



「…何で、あたしなの?」


だからやっと言えた言葉がそれ。


けれど、聞くべきではなかったのかもしれない。



「この一ヶ月近く、ずっとお前のことが頭から離れなかった。」

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