求愛
告白なのかはわからない。


それでも、泣いてるみたいな雨音が、タカの台詞を映し出す。



「マジでお前に会いたかったんだ。」


どうしてそこまで勝手なことを言えるのだろう。


なのに何故だか涙が出そうになって来て、それをぐっと堪えるように唇を噛み締めた。



「いい加減にしてよ!」


声を荒げた瞬間、



「じゃあお前、何でまたここに来たんだよ!」


そうだ、タカの言う通りだ。


だから抵抗しようとした体が急に弛緩して、彼はそんなあたしの頬にそっと触れた。



「こっち向け。」


それでも顔を背けていると、今度は唇が奪われた。


泣きたくなって、でも泣けなくて、抱き締められた時、図らずもただ、安堵してしまった自分がいた。


寂しくて、どうしようもなくて、だから本当は、こうやってぬくもりに触れていたかったんだ。


タカがくれる重みも体温も、全部、忘れることが出来ないくらいにあたしに刻み込んでほしいと願った。


子猫は灰色の瞳でこちらの推移を伺っている。


好きだとか愛してるだとかはいらないから、だからお願い。



「もう少しで良いから、こうしてて。」

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