求愛
6月に入って少し経った頃、学校帰りに乃愛と遊び、夜になったのでそれぞれに別れた。


なので久しぶりに家にでも帰ろうかと、ひとりで街を歩いていた時のこと。


コンビニの近くまで来たところで、



「リサちゃん?」


あたしを呼び止める声に足が止まる。


振り返ってみれば、黒塗りの車から道明さんが顔を覗かせていた。



「すげぇな、高校生ってマジだったんだ?」


そう言って、エロオヤジみたいに彼は、あたしを上から下まで舐めるように見る。


てか、ヤクザに街中で名前を呼ばれるなんて、堪ったもんじゃないけど。



「タカが猫なんか飼うって言った時点で笑ったけど、まさか制服着てる子にまで手出すなんてな。」


「何それ、嫌味?」


「いやいや、羨ましいってこと。」


悪意の欠片もないような顔で笑われると、やっぱり困ってしまう。


道明さんは思い出したように言った。



「タカ、あれで結構マジみたいだから。」


「ちょっと、やめてよ、そういうの。」


からかうような台詞を制したのに、



「何でだよ、俺は良いと思うけどねぇ。
恋愛なんて自由なんだし、死んだ人間には出来ねぇことなんだから。」


彼は感慨深げに言った。


いつもこの人は、あたし達に「仲良くしろよ。」なんて言う。


応援されているのかどうなのか、まるでお兄ちゃんみたいだと思ってしまうが。

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