求愛
「梢、昔はあんなんじゃなかったんだけどね。」
直人は少し悲しげに宙を仰いだ。
「中学入る頃くらいまでは、素直だったし、みんなに優しかったし、友達も多かった。」
けど、と言葉を切った彼は、
「アイツの姉ちゃん、賢くてさ。
スポーツも勉強も出来る優等生で、いつの間にか比べられるようになって。」
だから耐えきれなくなり、次第に荒れ始めたのだと、直人は教えてくれた。
梢の、それが家に帰りたがらない理由だった。
心配してる直人の気持ちがわからないわけではないけれど、でも彼女がそれを疎ましがっていることも知っている。
人の想いはいつだって一方通行にしかならない。
「直人さぁ、度が過ぎるお人好しは、迷惑にしかならないんだよ?」
「………」
「今は、アンタにはアンタの、やるべき大事なことがあるんじゃないの?」
本当はこんな風に言いたくはない。
でも、直人はスポーツ推薦を蹴ってまで、梢と同じこの学校に入学した。
けれどそれは、いつまで経っても報われることなんかないのだから。
「もうやめときなよ!」
今、最後のインターハイ前の大事な時期に、他のことに心を痛めてる場合じゃないと、あたしは思う。
だってこれじゃ、直人があまりに可哀想だ。
「直人はただ、幼馴染だってことに縛られ過ぎてるだけじゃない?」
直人は少し悲しげに宙を仰いだ。
「中学入る頃くらいまでは、素直だったし、みんなに優しかったし、友達も多かった。」
けど、と言葉を切った彼は、
「アイツの姉ちゃん、賢くてさ。
スポーツも勉強も出来る優等生で、いつの間にか比べられるようになって。」
だから耐えきれなくなり、次第に荒れ始めたのだと、直人は教えてくれた。
梢の、それが家に帰りたがらない理由だった。
心配してる直人の気持ちがわからないわけではないけれど、でも彼女がそれを疎ましがっていることも知っている。
人の想いはいつだって一方通行にしかならない。
「直人さぁ、度が過ぎるお人好しは、迷惑にしかならないんだよ?」
「………」
「今は、アンタにはアンタの、やるべき大事なことがあるんじゃないの?」
本当はこんな風に言いたくはない。
でも、直人はスポーツ推薦を蹴ってまで、梢と同じこの学校に入学した。
けれどそれは、いつまで経っても報われることなんかないのだから。
「もうやめときなよ!」
今、最後のインターハイ前の大事な時期に、他のことに心を痛めてる場合じゃないと、あたしは思う。
だってこれじゃ、直人があまりに可哀想だ。
「直人はただ、幼馴染だってことに縛られ過ぎてるだけじゃない?」