あした
心配なんてしているようには思えなかった。が、誠の優しい申し出を断われなかった。

黙ってうなずくと　美咲は　誠と一緒に自宅へ帰ることにした。

道を歩きながら　気まずいくらいの沈黙が続く・・・

「あっ・・・あの、あと　数百メートルですから　ここで・・・」

「いや・・・その　数百メートルで何かあるといけないから家の前まで送るよ」

誠が　そう言いながら　美咲に並んで歩いていると　反対方向から　美咲の父親の新造が

歩いてきた。

「あっ・・・・お父さん・・・・」

「ほら・・・心配していたんだ・・・」
　そう言い掛けた　誠を新造がいきなりこぶしで殴った。

　不意をつかれ　誠が地面に倒れ込んだ。

「お父さん、何するのよ!!」
　そう叫んだ美咲にも彼の平手が容赦なく飛んだ。

「こ・・・この　ろくでなしが！！黙って　こそこそ　家を出ていったかと思ったら
　こんな男と会っていたのか！！」

美咲の言い分など聴く耳も持たず　一気にまくし立てる。

「こ・・・こんな男って何よ！！」

逆上している　新造に向かい　美咲も言い返した。

「おまえが　家の娘をたぶらかしたのか！」

新造の怒りの矛先が　立ち上がろうとしていた　誠に向った。

誠の胸倉を掴み　さらに彼に殴りかかろうとしている。

あわてて　止めに割り込んだ美咲を新造が跳ね飛ばした。

それを見て　とっさに　美咲をかばおうと　誠が新造を跳ね飛ばした。

「お父さん！！なんで　美咲さんの事信じてあげないんですかぁ？」

跳ね飛ばされて　ひっくり返ったまま　誠を睨みつけている新造にそう言うと

誠が　美咲の手をとった。

「行こう！！」

「えっ？」

誠は　美咲の手を握ると　もと来た道を引き返し始めた。


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表紙・目次

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