あした
誠が 暗い目をしてうつむいた。

「彼らの愛に気がついて その愛を受け止めてくれる所があれば 彼らは生きていけるんだよ・・・・虐待して子供を殺してしまう 親が確かに一番よくないんだろうけど・・・
その 親の替わりになってあげようという受け皿も今の世の中 少なすぎるんだね。だけどさ、少なくとも 美咲ちゃんは 虐待もされず ご両親は 美咲ちゃんの事大事に育ててきたんだろ?それを感じるから 美咲ちゃんもなんとか 親の期待に答えようと無理してきたんじゃないのか?」

返す言葉がなかった・・・・

「今は 美咲ちゃんがご両親を愛する番なんじゃないの?」

「でも、私は お姉ちゃんみたいには 生きていけないもん・・・」

「だから お姉ちゃんの真似をしようとするから 辛いんじゃないの?真似することないんだよ。美咲ちゃんは美咲ちゃんだろ?無理をするから ボロがでる・・・ボロが出るから親が心配で先回りするんじゃないのか?」

「でも、もう 遅いよ・・・・お父さんもお母さんも 私のことなんて信用してないもん。さっきだって いきなり マコさんのこと殴ったりして・・・・・私の言う事なんて
信用してくれない・・・・」

美咲の目から涙がこぼれた。

「だから 愛されたくて取り繕って 無理をしてきた分 悪いと思いながら 美咲ちゃん
 がご両親に対してしてきてしまった事ってあるだろ?それって ご両親にしてみれば
 嘘だとか 欺きにしか見えなかったんだ・・・」

「そうよ!! 嘘もついた 騙しもした 困らせもした みんな お父さんやお母さんに
 私の事わかって欲しくてしたことよ。 親ならわかって当然のことしたまでじゃない!  違うの?それを今更 どうしろって言うの?!」

「辛いとこだよな・・・・でも、 大丈夫
    ・・・・親子なんだ。明日を信じて 頑張ってみろよ。」

「えっ?」

「美咲ちゃんは 神様信じるか?」

「信じない。」

「俺も信じてない。 無宗派だ。」

そう言って 少しだけ 明るい顔で誠が笑った。
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